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1970
あなた自身のためのレッスン
『海』1970年6月号
講演会の終わった後の市民ホールが舞台。住み込みの管理人夫婦は芝居好きで、様々な芝居の台詞で遊んでいる。ここへ事故で記憶を失った父・娘・息子の3人が逃げ込んで来る。これに記憶を取り戻させようとする妻と叔父も加わる。上演データ
上演データ
1970(昭45)年5月12日~18日
俳優座第98回公演
会場:俳優座劇場
演出:西木一夫
美術:安部真知
照明:染屋幸典
効果:田村悳
出演:原田芳雄/執行佐智子/袋正/菅貫太郎/市原悦子/秋好光果/鶴田忍 -
1970
想い出の日本一萬年
『同時代演劇』第4号(1971年)
白く大きな卒塔婆の山。その上に花子がいる。そこへサブローの父と二人の兄タロ、ジロがやってくる。サブローの死に際に恋人になった花子は彼の最後の様子を話す。その間、今日所や捜し物をする人が出入りする。いつしか大勢の人が口々に自分の想い出を語りはじめ、それが重なり合い呪詛のように響く。叫びは、念仏の合掌に変わっていく。
やがて父子三人に凌辱される花子。その四人に殴りかかる想い出の人々。花子は動かない。突然、無数の白い卒塔婆がふりかかる。静寂のあとに狂女の歌うような声が響く。上演データ
上演データ
1970(昭45)年9月10日~26日
/11月5日横浜国立大学清水ガ丘グランド
現代人劇場=新宿文化提携公演No.2
会場:新宿文化
曲:ボブ・ディラン
演出:蜷川幸雄
美術:若林南海男
照明:吉本昇
音響:今泉芳春
音楽:岡部公甫
舞台監督:石田英朗
ドラム指導:大口広司/萩原健一
出演:本田龍彦(父親)/蟹江敬三(タロ)/石橋蓮司(ジロ)/真山知子(花子)/利光哲夫/梶原譲二/岩井達/豊田紀雄/戸川暁子/加藤真智子/井上博一/坂口連/佐々倉英雄/松岡敏子/佐藤道江/野島ひろみ/松林明/原利一/溝口若子/といたじゅんこ/キムカンザ/つじあきら/舟橋三郎/舟木日夫/増山真吾/岡田茂美/吉田涼子/田所陽子/藤田裕子/中里安孝/田村満/鈴木隆信/他 -
1971
鴉よ、おれたちは弾丸をこめる
『テアトロ』1971年11月号
裁判所で二人の青年がチャリティーショーに爆弾を投げたかどで裁判を受けている。そこへ、孫を救おうと鴉婆、虎婆をはじめ、婆の一群が手に三味線、ホーキ、コーモリ等の武器を持って侵入。看守らを爆弾で殺害した後、裁判長・検事・弁護士らを次々に裸にして勝手に裁判を始め、まず検事を死刑にする。
裁判所の周囲を機動隊に囲まれ、投降するよう呼びかけられるが、検事の死体を外に放り出し、ついでに爆弾も投げ出す。そして中では裁判がは進められていくが…。上演データ
上演データ
1971(昭46)年10月6日~20日
現代人劇場=新宿文化提携公演No.3
会場:新宿文化
曲:エルトン・ジョン
企画:葛井欣士郎
演出:蜷川幸雄
美術:大野泰
照明:森一典
音響:高野昌昭
出演:蟹江敬三(青年A)/梶原譲二(青年B)/緑魔子(鴉婆)/真山知子(寅婆)/加藤真智子(女歌手)/本田龍彦(裁判長)/湯浅実(弁護士)/石橋蓮司/鶴田忍/井上博一/山谷初男/豊田紀雄/石井愃一/吉田潔/野島ひろみ/清水祥司/溝口若子/キムカンザ/岡田茂美/佐々倉英雄/大川泉/原利一/古山桂治/佐藤道江/川合ひろみ/阿藤海/進藤郁男/小野太郎/舟木日夫/他 -
1971
いとしいとしのぶーたれ乞食
『同時代演劇』第4号(1971年)
気の狂った乞食の老人夫婦がもう何十年もおかげまいりの集団がやって来るのを待っている。そこへ、おかげまいりツアーの一行がやって来る。かつてのおかげまいりのように徒歩での乞食旅行をパックツアーにした旅行社の男と、未亡人、その娘で自殺マニアの女、使用人の女中・運転手・看護婦の6人である。現代生活にあきあきしているくせにそこから抜け出せない彼らは、このばかげたツアーに参加することで何かを得られる気になっている。
やっとおかげまいりに出かけることが出来るという、老婆の喜びと期待にツアーの連中は圧倒される。結局、老婆の幻想は打ち砕かれ、一行は去っていくが…。上演データ
上演データ
1983(昭58)年7月
木冬社ミニシアター公演No.3
会場:木冬社アトリエ
演出:清水邦夫
出演:黒木里美/伊藤珠美/他 -
1972
ぼくらは生れ変わった木の葉のように
『辺境』第8号(1972年)
一組の男女が乗った自動車がある家に突っ込む。そこには夫と妻、その妹の3人が暮らしていたが、壁を壊して入り込んできた車に対して妙に落ち着いている。彼らは家を破壊した当の男女を心からもてなす。放浪を半年続けて来て、歓迎されることになれていない二人は、居心地が悪く感じるが、次第にこの家族の術中に陥り、ついには泊まってしまう。
1ヶ月後、5人は何故か芝居のまねごとをしたりして一緒に暮らしている。夫婦はしつこく出て行こうとする二人をあれやこれやで引き止めようとするが…。上演データ
上演データ
1972(昭47)年4月
演出:清水邦夫
出演:桐朋学園大学演劇科 -
1972
ぼくらが非情の大河をくだる時―新宿薔薇戦争
岸田國士戯曲賞(第18回・1974年度)
『テアトロ』1972年11月号
深夜、都内の公衆便所は男が男を求めて集まる場所となる。詩人が現れ、便所の壁や柱を愛撫し始める。彼は愛に破れた無名戦士たちが公衆便所の下に埋められていると信じ、毎夜探し歩いている。父と兄は白木の棺桶を持ってその気狂い弟トオルを追う。二人は何度も彼を見捨てようとする。が、兄はかつて弟を裏切ったことを悔やみ、弟の描く強い兄の役を演じ続ける。その偶像が壊れたとき、詩人は兄の持つナイフで自らの命を絶つ。兄は父を見捨て、背に詩人の死体をくくりつけ、夜の町に消えてゆく。上演データ
上演データ
1972(昭47)年10月6日~21日
/11月3日立教大学,11月5日武蔵大学
櫻社=新宿文化提携公演No.1
会場:新宿文化
曲:バッハ+ボブ・ディラン+キング・クリムゾン
企画:葛井欣士郎
演出:蜷川幸雄
美術:大野泰
照明:白井良直
音響:市来邦比古
舞台監督:石田英朗
出演:蟹江敬三(詩人)/石橋蓮司(兄)/本田龍彦(父)/赤石武生/石井愃一/阿部好広/天野外郎/石川邦彦/うかわ・いく/高土新太郎/苔野ムスマデ/谷正雄/筒井義和/鳥居直彦/中村周二/西村克己/西山健二/式川喜俊/力石民穂/他 -
1973
泣かないのか?泣かないのか一九七三年のために?―にぶき光の残酷ショー―
大衆浴場「百人湯のしまい湯」。青年と教師が入る中、老婆が桶を片付けている。すると突然ボロボロで血塗れの男たちの一群がなだれ込む。彼らは残酷ゲイボーイショー「責縛座」の一座なのだが、その傷はショーでつけたものではなく、あまりにお粗末な芸に怒った客に襲われたのだった。
かつてのスター・ジュリーの不在をなげく老婆と座長のお滝。新しいスターを発掘すべく青年と教師を巻き添えにして残酷ショーが始まる。「真情あふるる軽薄さ」「想い出の日本一萬年」「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」「ぼくらが非情の大河をくだる時」と懐かしい場面が繰り広げられる。
ショーが終わっても老婆たちが起き上がらない。その死体を愛撫し始める群。その屍姦者の群に加わることを拒絶した教師と青年はお滝らに縛られ、タンゴを踊りながら死んでいく。彼らを乗せた白い浴槽の舟は闇に消えていく。上演データ
上演データ
1973(昭48)年10月12日~27日
櫻社=新宿文化提携公演No.3
会場:新宿文化
曲:ケメ+バッハ+和讃
企画:葛井欣士郎
演出:蜷川幸雄
美術:大野泰
照明:吉本昇
音響:市来邦比古
作曲:田山雅充
舞台監督:高橋正篤
出演:石橋蓮司(教師)/蟹江敬三(青年)/石井愃一(お滝)/西村克己/赤石武生/鈴木弘一/和田沙菜恵/椎谷健治/石川邦彦/谷正雄/中村周二/つじあきら/小山正隆/鈴木弘一/杉山正/内村直樹/中西良太/堂下繁/古田マユミ/田根楽子/吉見咲羅/亀岡梨枝子/羽田えみ子/他 -
1975
幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門
書き下ろし新潮社劇場
藤原秀郷に追われ、追いつめられている平将門一行。すでに味方は10名余りに減っている。逃げ落ちる途中、頭に大けがをした将門は自分が何者であるかを忘れ、こともあろうに自分が将門を狙っている武者であると思い込むという狂気にとり憑かれた。
幼い頃からの将門の親友である三郎と将門の妻・桔梗はその姿に混乱するが、三郎の弟で将門の影武者・五郎はこの機に乗じて自らが将門になろうとする。秀郷の追っ手が来ると三郎は、五郎が本物の将門であるという芝居をして将門自身に五郎を斬らせる。こうやって影武者を使い、秀郷の追求の手を逃れてきた三郎であったが、ついに進退きわまり、最後の大芝居をうつことにする。それは…上演データ
上演データ
1976(昭和51)年5月15日/22日
劇団河公演
会場:旭川市文化会館小ホール/STVホール
演出:清水邦夫
装置:勝浦達也
小道具:吉田美砂/近藤恵理
衣裳:池ノ内仁子
照明:小柳妙子/松永宏
音効:星野由美子
作曲:山本昇一
出演:北門真吾/塔崎健二/ふじきまこと/星野由美子/中津川慎/子森思朗/勝又三郎/他 -
1976
花飾りも帯もない氷山よ
『新劇』1976年10月号
男がアパートの自室でウィスキーを飲んでいる。捨てたと思っていたセーターが10年ぶりに出てきて、それを眺めたり臭いをかいだりしている。セーターを着ようとすると、何やら悲鳴がする。セーターが悲鳴を上げたかのようだ。無理矢理着ると、男は突然「あいつ」の部屋にいる。
あいつはどこかで会ったことがあるような、それでいてどうしても思い出せない顔をしている。あいつに芝居の稽古の相手をするように言われ、無理矢理つきあわせられるが次第におかしな具合になっていく。あいつは弟なのか、かつて馴染みだった売春婦なのか…?上演データ
上演データ
1976(昭51)年10月4日~6日
関弘子プロデュース公演
会場:渋谷ジァンジァン
演出:清水邦夫
照明:日高勝彦
出演:松本典子(あいつ)/吉岡祐一(男) -
1976
夜よ おれを叫びと逆毛で充す 青春の夜よ
紀伊國屋演劇賞(第11回・1976年度)個人賞
『群像』1977年1月号
北の果てのにしん漁場。かつては入江いっぱいににしんが群来し、多くの労働者がながれて来た。その中には犯罪者もいたが、網元はにしん番屋にかくまい、警察の追求を防いでいた。
今は使われていないにしん番屋の一つに「あに」が住みついている。彼はここにいつく浮浪者が犯罪者で、自分はそれをかくまう責任があるという妄想にとりつかれている。
そこへ祝巫女姿のゆきと勝子が沖つ神事の舞の稽古をしながらやって来る。ゆきは「あに」の父親の後妻で、あにとは5歳しか離れていない。弟の次郎が3年ぶりに帰郷し、あにの様子をさぐるが、あにはゆきの顔すら忘れ、ゆきは海の底に沈んでいると思いこんでいる。
ゆき達とあにの関係を修復すべく、おとうとはゆき達に嘘でもいいから犯罪を犯したと告白すれば、あにの興味がわくと、ゆきに告白を勧める。そこでゆきが語った犯罪とは…。上演データ
上演データ
1976(昭51)年11月12日~18日
木冬社第1回公演
会場:ABC会館ホール
/12月2日神奈川県民ホール
演出:清水邦夫
演出補:篠崎光正
美術:山崎泰孝/加藤義夫
照明:河野竜夫
音楽:萩原健一
効果:山本泰敬
舞台監督:石田英朗
出演:山崎努(あに)/松本典子(ゆき)/立川光貴(おとうと)/新野加代子(勝子)/大友龍三郎(源十)/中野礼子(はな)/安倍玉絵(しか)/山本紀子(葉子)/菊池信吾(たもん)
1979(昭54)年11月25日~30日
木山事務所公演
会場:渋谷ジァンジァン
演出:藤原新平
美術:清水邦夫/濃野壮一
照明:日高勝彦
音響:深川定次
出演:佐藤オリエ/西岡徳馬/直井修/他 -
1977
楽屋―流れ去るものはやがてなつかしき―
『新劇』1977年8月号
楽屋。亡霊になった女優Aと女優Bが楽屋で念入りに化粧をしながら、永遠にやっては来ない出番にそなえている。今上演中なのはチェーホフの「かもめ」。主役のニーナ役の女優Cが楽屋に戻って来ると、プロンプターをつとめていた女優がパジャマ姿でマクラを抱えて現れる。
女優Dは精神を病み入院していたが、すっかりよくなったから、ニーナ役を返せと女優Cに詰め寄る。言い争いになり、女優Cは思わず女優Dの頭をビール瓶で殴ってしまう。女優Dは起き上がってふらふらと出て行くが、女優Cが楽屋を出ていった後に戻ってくる。今度は亡霊のAとBが見えている。打ち所が悪く死んでしまったようだ。ニーナ役が欲しくて精神異常になった若い女優がまた一人死んだ。
3人になった楽屋の亡霊は、何かの拍子にやって来るかもしれない出番のために稽古を始める。「わたしたちだけがここに残って、またわたしたちの生活を始めるのだわ。生きていかなければ、…生きていかなければ…」上演データ
上演データ
1977(昭52)年7月13日~16日
木冬社第2回公演
会場:渋谷ジァンジァン
演出:秋浜悟史
美術:大野泰
照明:日高勝彦
効果:深川定次
舞台監督:織田忠正
出演:松本典子(女優C)/安倍玉絵(女優A)/中野礼子(女優B)/新野加代子(女優D) -
1978
火のようにさみしい姉がいて
『群像』1978年11月号
ある中年の俳優夫婦が、仕事にも生活にも行き詰まりを感じ、20年ぶりに雪国の故郷に帰る。彼らはお互いに相手が精神を病んでいると思っている。駅前の理髪店へ立ち寄り、誤ってシャボン溶かしのカップを割ってしまうと、そこの女主人や店の客に不当な嫌がらせ受ける。
その理髪店の女主人は夫の姉のように振る舞うが、夫は姉ではないと主張する。夫の弟と名乗る男も現れ、店の客たちも夫が間違っていると言う。妻は混乱し、夫の言うことよりも彼らの言うことを信じ始める。
しかし妻は姉と名乗る女に向かって夫を守ろうと戦いを挑むのだが、故郷の幻影に翻弄され、ついには…。上演データ
上演データ
1978(昭53)年12月18日~28日
木冬社第3回公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:秋浜悟史
美術:大野泰
作曲:池辺晋一郎
音響:前島幹彦/深川定次
舞台監督:一谷俊彦
出演:山崎努(男)/松本典子(男の妻)/岸田今日子(中ノ郷の女)/伊藤惣一(みをたらし)/中村美代子(さんざいみさ)/堀勝之祐(スキー帽)/大友龍三郎(青年)/五十嵐美恵子(べにや)/二村民子(しんでん)/金田明夫(ゆ)/安倍玉絵(見習)/新野加代子(見習)/五味多恵子/桑島明美/村雲敦子/坪井恵/折井みえこ/山木チヒロ/人村明美/鄭〓(王へんに差)玲/田端芳子(以上毒消したち) -
1979
戯曲冒険小説―歳月よ、老いさらばえた姫たちよ
受賞:芸術選奨(第30回・1979年度)演劇部門・新人賞
『新劇』1979年8月号
男は今日もまたハイヒールの万引きに失敗して帰ってくる。妻は土蔵の前で亡き夫が万引きしてきた夥しい数の色とりどりのハイヒール並べている。男は余命いくばくもない妻が前夫の伝記を完成するために、前夫と同じ冒険をし、そのスリルと興奮を感じることによって、前夫が惹かれてやまなかった冒険の〈感じ〉をつかまなければならないのだ。
彼女の前夫は大学で水産学の講師をし、未知の魚を求めて探検家のように世界中を回っていたが、アンデスの某国の内戦に巻き込まれて死んだ。妻は亡き夫の伝記を書くため通っていた図書館の司書と1年3ヶ月前に結婚した。
男がまた万引きに失敗し、喫茶店で靴屋の主人につかまるが、その話を聞いていた外套を来た男に万引きが成功する秘訣を教わる。外套が語る盗みにまつわるスリルと興奮を例える冒険話はまるで妻から聞いた前夫そのものだった。外套はいったい誰なのか…?上演データ
上演データ
1979(昭54)年7月17日~26日
文学座アトリエ公演
会場:文学座アトリエ
演出:藤原新平
美術:藤野級井
照明:古川幸夫
効果:深川定次
出演:菅野忠彦/小林勝也/角野卓造/神保共子/他
1981(昭56)年12月2日~7日
レクラム舎公演
会場:渋谷ジァンジァン
演出:明石武生
美術:清水邦夫/濃野壮一
照明:日高勝彦
音響:深川定次
出演:草野大悟/鶴田忍/小林トシエ/鈴木弘一/羽田えみこ/他