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1980
わが魂は輝く水なり
泉鏡花賞(第8回・1980年度)/テアトロ演劇賞(第8回・1980年度)
『群像』1980年2月号
時は源平合戦の時代、平維盛と木曽義仲軍が激突した倶利伽羅合戦の直後。斎藤実盛はかつて、わずか二歳の源次郎義仲の命を助け、ひそかに木曽山中の中原一族に預けたが、今は敵味方となって戦っている。倶利伽羅合戦は一万の義仲軍が十万の維盛軍を夜襲で蹴散らし、わずか五千が生き残ったという、義仲が圧勝した戦いであった。しかし屍体が累々と積み重ねられた倶利伽羅の谷をのぞき込む義仲軍の兵士の眼は一様に暗かった。
斎藤実盛の息子五郎は幼い頃から義仲や巴御前と親しんできたため、敵対する平家の一門であるにもかかわらず、八年前に義仲軍に身を投じた。しかし、不慮の死を遂げ、今は亡霊となって父・実盛につきまとっている。
実盛も倶利伽羅合戦に傷ついたが生き残り、故郷である越前の南井の里、藤原権頭の屋敷に帰って来た。そこに居合わせた五郎の弟・六郎は父の傷ついた姿に義仲軍の強さを見、木曽義仲の元へ走った。しかし六郎が見た義仲軍の実体は…。上演データ
上演データ
1980(昭55)年2月16日~17日,3月2日~9日
劇団民藝公演
会場:砂防会館ホール
/2月19日金沢市観光会館/2月20日鯖江市文化センター/2月21日福井市文化会館/2月23日~25日名古屋・名鉄ホール
演出:宇野重吉
装置:内田喜三男
照明:秤屋和久
音楽:間宮芳生
効果:山下泰敬
出演:宇野重吉/大森義夫/奈良岡朋子/梅野泰靖/内藤安彦/山本勝/新田昌玄/鈴木智/伊藤孝雄/小沢弘治/塩屋洋子/真野響子/桝谷一政/綿引洪/助川次雄/他 -
1980
青春の砂のなんと早く
テアトロ演劇賞(第8回・1980年度)
『テアトロ』1980年6月号
全国をセールスして回っている男が偶然汽車の中で知り合った男の様子がおかしいため、病院に連れて行く。そこでその男が記憶喪失だとわかる。彼の妻とその母親が面会に来て、3ヶ月前に失踪した夫だと申し出る。しかし男には妻を覚えていない。逆に「行きずり」のセールスマンが本当にただの行きずりなのか、疑問に思い始める。
妻が偽物なのか、セールスマンは実は古くからの友人で今自分が邪魔になって捨てようとしているのか、わからなくなって混乱し始めるが、記憶喪失と言っている男自身が嘘をついているのかもしれないのだ…。上演データ
上演データ
1980(昭55)年6月11日~15日,9月16,21,26日,10月1,6,11,16,21,26,31日,11月5,10,15,20日
青年座「5人の作家による連続公演」
会場:青年座劇場
演出:五十嵐康治
美術:綾部郁郎
照明:佐久間和雄
効果:高橋厳
出演:山路和弘(男)/大塚國夫(年上の男)/中台祥浩(医師)/大橋芳枝(妻と称する女)/五味多恵子(母親と称する女)/児玉譲次(9/16~医師) -
1980
あの、愛の一群たち
テアトロ演劇賞(第8回・1980年度)
『新劇』1980年8月号
中年の女が15年ぶりに日本海沿いの故郷へ帰ってきた。薄暗い郷土資料館を訪れた彼女は、精神病院を抜け出してきたという若い女と、その姉夫婦にであったことから、虚構とも現実ともつかぬ関係に巻き込まれていく。そして次第に3人の女達の過去があぶり出されていく…。上演データ
上演データ
1980(昭55)年7月12日~22日
木冬社第6回公演
会場:紀伊國屋ホール
/7月25日兵庫県尼崎市ピッコロシアター
演出:秋浜悟史
美術:安部真知
照明:日高勝彦
音響:深川定次
作曲:池辺晋一郎
出演:岸田今日子(ぎん)/吉行和子(しのぶ)/松本典子(ふね)/鈴木弘一/安倍玉絵/新野加代子/人村明美/平松ひとみ/他 -
1981
一九八一・嫉妬
『テアトロ』1981年6月号
日本海沿いの小さな洋裁店とその隣の気象館。気象館は天文学に凝った国語教師が建てたもので、以前は黒い旗を立ててこっそり天気予報をしたりしていたが、今はその男は亡くなって姉娘が一人で暮らしている。妹娘の方は東京で女優になり、大学教授と結婚している。洋裁店は兄弟で経営していたが、スキーの選手でもあった弟が6年前に亡くなって以来、弟の娘に手伝ってもらいながら、兄が一人で切り盛りしている。
ある日、見知らぬ男が洋裁店にやって来て、背広を作るようでもなく、兄にあれこれと質問をする。それも「隣を覗いたり、忍び込んだりしているんじゃないか?」という失礼なもので、兄は否定するが、その直後、覗かれていると証言する当の姉娘がやって来て…。上演データ
上演データ
1981(昭56)年5月
文学座アトリエ公演
会場:文学座アトリエ
演出:藤原新平
美術:藤野級井
照明:古川幸夫
効果:深川定次
出演:松下砂稚子/二宮さよ子/菅野忠彦/角野卓造/下村彰宏 -
1981
あらかじめ失われた恋人たちよ―劇篇―
『テアトロ』1981年10月号
とある地方にある歯科医院が舞台。ここには歯医者の姉と義理の妹、ずっと東京にいたが帰って来たばかりという妹が3人で暮らしている。そこへ一人の男が訪ねて来る。男は事故で死んだこの家の弟の友人だと名乗る。弟は蝶の収集家で、奄美大島で3ヶ月間一緒に蝶を追ったと話す。
この歯科医院のある地方には霧ケ沢という蝶の宝庫がある。ここには幻の蝶と言われる蝶がいて、男はその蝶を探しに来たのが、義妹はすでに絶滅したと話す。どうやらこの歯医者を根城に蝶を捕獲しようと目論んでいるらしい男を姉は追い出す。
ところが、男が帽子を忘れて行ったことから、翌日女3人は男を捜しに霧ケ沢へ行く。そこで蝶の同好会という連中に出会ったことから妙な出来事に巻き込まれて行く…。上演データ
上演データ
1981(昭56)年10月16日~18日
木冬社第7回公演
会場:砂防会館ホール
/10月19日~25日紀伊國屋ホール/10月27日名古屋・名鉄ホール/10月28日和歌山県民文化会館/10月29日~30日兵庫県尼崎市ピッコロシアター
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
出演:岸田今日子/吉行和子/松本典子/清水紘治/鈴木弘一/安倍玉絵/人村明美/守屋るみ/他 -
1982
昨日はもっと美しかった―某地方巡査と息子にまつわる挿話―
『悲劇喜劇』1982年2月号
息子が失踪宣言を受けて七年経ち、行方不明のまま葬式をあげることになった、ある家族の物語。警官である父親は担当している毒ガス工場から終戦のどさくさにまぎれて一瓶のホスゲンを盗み出し、庭の赤いカンナの木の根元に埋めた。ホスゲンは水に溶かせば200~300人もの人間を殺すことが出来る猛毒だが、逆に水の中にホスゲンを1滴2滴垂らせば人間を恍惚とさせる気体が発生する。
それを弟が見つけ、警察署長の娘マスヨと二人で楽しんでいるところへ父親が帰って来る。逆上した父親は…。上演データ
上演データ
1982(昭57)年1月20日~2月3日
木冬社=俳優座劇場提携公演
会場:俳優座劇場
演出:清水邦夫
美術:濃野壮一
照明:服部基
音響:深川定次
出演:清水紘治/吉行和子/和田周/野中マリ子/守屋るみ/他 -
1982
雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた
『ミュージカル』誌ベストテン(1982年度)スタッフ部門・第10位
深夜の百貨店。かつてここにあった石楠花少女歌劇団のヒロイン風吹景子と、その熱烈なファンで、今や地位も名もある五人のロミオたちが優雅に踊っている。それは、戦争中に記憶をなくした景子が三十年ぶりに蘇り、再び歌劇団を結成するための稽古だった。
仲間かつての相手役、弥生俊の出現を心待ちにしていた景子だったが、ちりぢりになった歌劇団のメンバーを呼び集めても俊はやって来ない。ところが俊の妹と名乗る女が現れ…。上演データ
上演データ
1982(昭57)年5月4日~28日
東宝プロデュース公演
会場:日生劇場
曲:ニナ・ハーゲン+キング・クリムゾン+バッハ
演出:蜷川幸雄
美術:妹尾河童
照明:吉井澄雄
衣裳:小峰リリー
音楽:甲斐正人
振付:川西清彦
効果:高橋巌
出演:淡島千景(風吹景子)/久慈あさみ(弥生俊)/佐藤慶(新村久)/渡辺文雄(坪田英次郎)/三谷昇(六角始)/山谷初男(畑米八)/仲恭司(北村英一)/汀夏子(加納夏子)/甲にしき(弥生理恵)/加茂さくら(直江津砂織)/高殿ゆかり(城崎すみ江)/渕野俊太(北村次郎)/夏亜矢子/若山かずみ/姿美也子/久松今日子/旭天女/大町桂子/千羽鶴/宮城麗子/淡島千尋/杉四季子/明津珠女/早乙女寿美江/白州三千代/加寿賀きよし/三枝夏実/萩雅恵/茜美樹/菊かほり/麗たつみ//流けい子/杉まりこ/山田昌代/水の瀬あきら/志吹直美/山科志子/美濃ゆたか/沢かをり/上原まり/玉梓真紀/三谷侑未/野路きくみ/水乃亮/秋月みさを/美奈瀬杏/吉田キヨミ/小野真理子/藤咲章恵/松永真以子 -
1983
エレジー―父の夢は舞う
読売文学賞(第35回・1983年)戯曲賞
工業高校で生物の教師をしていた平吉もすでに停年になり、その弟の右太は映画のプロデューサーのようなものをしているらしいが、兄に借金がある。ある日、右太は兄の家の修繕をしにやって来た。そこへ平吉の息子の嫁が訪ねて来る。
平吉の息子、草平は最近肺炎で亡くなったばかりだが、この家を買うにあたり、頭金を平吉が出し、ローンは草平夫婦が払っていた。草平夫婦は最初は一緒に暮らそうとしたのだが、結局家を出てアパートで暮らしていた。それにも関わらず草平はローンを払い続けたが、草平が死んで嫁が払い続けるのもおかしな話だと、嫁の塩子がローンの督促状を届けに来たのだ。
平吉と塩子は初対面の印象が悪かったらしく、平吉は塩子から逃げまわる。だが、共稼ぎしていた息子夫婦が払ったローンの中には塩子の分も入っているから、その分は返すが今は金がないという妙に堅い平吉に対し、断る塩子。彼女はこの家を自分のものにする、という夢をもって払い続けていたが正式な妻ではないため、草平の死とともにそれはかなわなくなった。もう、そういうあてにならないものをあてにして生きていたくない、という。平吉は名義替えをしてやるから、今まで通りローンを払い続けて、自分が死んだらこの家をもっていけばいい、という変な提案を塩子にする。塩子の方もついそれを受けてしまうが…。上演データ
上演データ
1983(昭58)年9月
劇団民藝公演
会場:三越劇場
演出:宇野重吉
美術:内田喜三男
照明:秤屋和久
音響:間宮芳生
効果:山下泰男
出演:宇野重吉/南風洋子/仙北谷和子/三浦威/西川明 -
1983
とりあえず、ボレロ
日本海ぞいの町にある古い写真館。ここには弟夫婦と共に暮らす一人の初老の女がいる。元は女優だったらしい。冬のある日、突然一人の女が写真館を訪れる。写真館の女とはかつてライバルで、浮名を流し合った女で、いまなお現役の女優である。二人は二十年ぶりの再会だった。
しかし現役の女優の方は、老残の男を連れている。かつて二人の女優を三角関係のただ中に放り込んだ男である。一人の女はある日決然と二人の前から姿を消し、残された二人は共に暮らしていたと思われるのだが…上演データ
上演データ
1983(昭58)年12月
木冬社第9回公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
出演:吉行和子/松本典子/磯部勉/中村美代子/黒木里美/他
再演:1985(昭60)年12月8~15日
木冬社第11回公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
振付:村田大
舞台監督:堀井俊和
出演:吉行和子(中沢しのぶ)/松本典子(木南ふね)/垂水悟郎(沢田治)/川口啓史(木南哲夫)/中村美代子(豊川豊野)/黒木里美(木南砂子)/伊藤珠美(日高けい)/磯野佐和子(日高るい)/石塚智二(日高よしお)/他 -
1984
タンゴ・冬の終わりに
日本海に面した町の古びた映画館「北国シネマ」。清村盛は有名な俳優だったが、三年前「オセロー」の舞台を最後に突然引退した。今は女優であった妻ぎんと、弟重夫の経営する映画館でひっそり暮らしている。
そこへ俳優仲間であった名和水尾と夫の連が現れる。水尾は今や演劇界のホープともてはやされているが、かつては盛と激しい恋に燃えていた。彼女は、突然姿を消した盛に心を残したまま女優として歩み始め、過去を捨てるため連と結婚したのだった。
ある日盛からぜひ会いたい、という手紙を受け取りやってきたのだが、そこで見たのは、すっかり狂気の世界に閉じこもった男の姿だった。上演データ
上演データ
1984(昭59)年4月3日~30日
パルコ制作公演
会場:パルコ劇場
曲:バッヘルベル「カノン」+遠藤ミチロウ+戸川純
演出:蜷川幸雄
美術:朝倉攝
照明:吉井澄雄
振付:村田大
音響:高橋巌
衣裳:合田瀧秀
舞台監督:高田憲治
製作:増田通二
出演:平幹二朗(清村盛)/松本典子(清村ぎん)/石丸謙二郎(重雄)/名取裕子(名和水尾)/塩島昭彦(名和連)/野中マリ子(清村はな)/坂口義貞(上斐太)/大門伍郎(北斐太)/吉原朝島(西斐太)/平井太佳子(宮越信子)/黒木里美(宮越信子)/伊藤珠美(タマミ)/阿川藤太(トウタ)/蜷川幸雄(黒マスク)/鬼塚まゆみ(盛の姉)/小川大介/高橋功/伊藤千啓/加賀見史彦/真屋重光/中村務/榊原淳/吉田貫蔵/林田十士男/重冨俊明/大石継太/間宮栄治郎/小西和也/だんつかさ/妹尾正文/岩下雅彦/原口紀哉/藤川修介/高城史朗/星真一郎/直田積/渕野直幸/篠原翔/片岡公生/落合英雄/布矢勇/大川浩樹/二瓶新一/窪せいいち/安田英一/木谷匡勝/やまび研/郷原信親/計屋賢二/松井史朗/石橋慶一/山本美千代/宮下喜久美/久原多香子/本田浩美/門岡ひとみ/大塚真弓/内藤順子/南谷朝子/豊田恭子/近藤恭代/森恵子/御影千絵/石井ひでゆ/福島理水/川上比奈子/花上智子/下辻奈緒美/鈴木京子/白内智香子/鵜沢ひさ子/小池由香/寺川直美/菊岡薫/磯野佐和子/祝部和子/今野真紀子/林香子/宇賀美佳/阿部晃子/城間恵/宮下敬子/石原さとみ/中村恵子/坪井美香/鈴木真理/江川朋美 -
1984
海賊、森を走ればそれは焔……―九鬼一族流史―
『文芸』1984年8月号
湊の衆はかつて瀬戸内海の海賊だったが、今は陸に上がり、尼崎藩の水道陣屋の管轄におかれている。湊の衆の兄弟、三郎と五郎はある日帆立雲を追いかけて森の中に迷い込んでしまった。そこで久鬼水軍の一族と名乗る不思議な男に出会う。久鬼水軍は元は伊勢鳥羽の海で活躍していた海賊だったが、摂津の三田藩に転封され、陸に上がって十五年になる。
その男は久鬼一成といい、久鬼水軍の水にも潜ると言われた船「海神丸」を転封の折りこっそり森の奥の小沼に運び込んだと語る。三郎と五郎はにわかには信じかねるが、そこへ二人を捜索に来た湊の衆がやって来て…。上演データ
上演データ
1984(昭59)年7月
俳優座公演
会場:俳優座劇場
演出:増見利清
美術:高田一郎
効果:田村悳
出演:磯部勉/堀越大史/香野百合子/中村美代子/松本克平/他 -
1984
ラヴレター―愛と火の精神分析
北陸の海の近くにある街。高校生の吉村眩太は母を早くに亡くし、今は駅員の父と二人の妹の4人で暮らしている。ある日突然、父が駅前ホテル・北陽館の未亡人と再婚することになり、眩太や妹も一緒に北陽館に移り住むことになる。
義理の母になる女性は強烈な人で、最初から眩太と対立し、一緒には暮らせないと飛び出そうとしたが、男っぽい性格の義母・りんには美しい夢見るような妹がいて、彼女に惹かれた眩太はそのまま北陽館に住みつくことになる。
翌年の夏、父が亡くなって、ますますりんに頼らざるを得ない眩太たち。妹たちはそれなりに義母と親しくなっているのだが、眩太は相変わらずのまま五年が過ぎた…。上演データ
上演データ
1984(昭59)年12月
木冬社第10回公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
出演:吉行和子/松本典子/中村美代子/磯部勉/他
受賞:紀伊國屋演劇賞(第19回・1984年度)個人賞(松本典子) -
1985
救いの猫ロリータはいま……
『テアトロ』1985年7月号
夕暮れの田舎の図書館の分室。ここに旅行中の若い男女が飛び込んで来る。スポーツをやっている学生と女優の卵らしい。二人はついさっき予約していた民宿の目の前まで行ったのだが、何となく気に入らなくてUターンしてしまい、ふらっと図書館にやって来たのだ。
女の方が突然卒業公演の芝居をやり始めたため、図書館の職員がやって来る。一人は室長らしい女、もう一人はその部下らしい男。二人が閲覧室からいなくなると、入れ替わりスキー帽をかぶった中年の女が閲覧室に入り、じっと二人の様子を伺っている。気味が悪くなったため問いただすと、さっき目の前まで行って逃げ出した民宿の主人だった。女はキャンセルを取り消すよう二人にしつこく食い下がるが、拒絶される。
そして図書館には、近くに住みながら話したことがない室長と民宿の主人、そして部下の男の三人が残されることになったが…上演データ
上演データ
1985(昭60)年5月31日~6月9日
演劇集団円公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:村田大
美術:朝倉攝
照明:五十嵐正夫
効果:深川定次
舞台監督:山下智
制作:若狭隆人
出演:岸田今日子/立石涼子/平栗あつみ/小林宏史/田原正治
地方公演:1985年6月13~14日 尼崎ピッコロシアター/6月16日京都府綾部・中央会館 -
1985
95kgと97kgのあいだ
『テアトロ』1985年7月号
芝居の稽古場が舞台。ここはかつて染色工場だったらしい。そこでは「行列」の稽古が続いている。
そこへ突然なだれ込んでくる一群。かれらは以前の「行列」に出演したあの人々だ。それぞれ大きな「荷」を背負い、行列をしながら「荷」の重さにこだわる。95kgと97kgの違いをはっきり示す、という彼らの作業は次第に熱気を帯び、暴力的になっていく。傍観していた現在の「行列」の人間たちも、やがて応援を始め、目に見えない荷を背負わされて過去の「行列」に取り込まれていく…上演データ
上演データ
1985(昭60)年6月15日~30日
GEKISYA NINAGAWA STUDIO
会場:ベニサン・ピット
曲:ビバルディ
演出:蜷川幸雄
美術:朝倉攝
照明:原田保
音響:高橋巌
舞台監督:高田憲治
出演:渕野直幸(青年)/平井太佳子(女0)/大石継太/大川浩樹/川部一郎/菊池一浩/清家栄一/妹尾正文/間宮栄治郎/鈴木真理/中村恵子/宮城由佳/山本美千代/石橋慶一/伊東千啓/ダックス小峰/高木透/飯田邦博/岩本レオ/渋谷茂/菅原和幸/安田英一/坪井美香/西初恵/御影千絵/みやたきこ/磯崎礼子/小野田由起子/影山仁美/桑原緑/澤田隆子/鈴木裕美/長谷川晴美/久川明美/森田真由美/山口万紀子/二瓶志門/矢野素雅 -
1985
花のさかりに死んだあの人
『テアトロ』1985年11月号
心臓発作で死んだ父親の金庫から遺書が出てきた。平凡な本屋の主人だと思っていた息子たちはその内容に驚く。父親には二十五歳の愛人がいて、6回分割払いで遺産を与えるように書いてあったのだ。その女は川向こうの団地に住んでいるらしく、兄弟たちは気は進まないが、小切手をもって訪ねて行くことにする。
途中で女性が苦手という兄とはぐれ、仕方なく弟は一人で訪ねて行ったが、女の部屋には女の妹や叔母、近所の人たちが大勢いて、うどんを作っている。父はこの連中たちと知り合いだったらしいのだが…。上演データ
上演データ
1986(昭61)年3月
木冬社=ジァンジァン提携公演
会場:渋谷ジァンジァン
演出:清水邦夫
照明:日高勝彦
音響:深川定次
出演:黒木里美/伊藤珠美/林香子/王城美璐/白内智香子/鈴木杏子/南谷朝子/石塚智二/他 -
1986
夢去りて、オルフェ
芸術選奨(第37回・1986年度)演劇部門・文部大臣賞(松本典子)
時代は昭和14年、北一輝を生んだ佐渡の対岸、北陸の酔ヶ浜という地が舞台。ここにはかつて遊園地があったが、昭和10年に大火に見舞われ消失し、そのまま放置されていた。
この地の中学校・有窓学舎の国語教師、桂木一機は若い頃から北一輝を信奉していたが、彼が二・二六事件で死んだ後も未だに生きているものと信じている。
一機の父親は彼が九歳のとき再婚し、その連れ子のぎんと新子という血の繋がらない妹がいる。新子は一機の同僚の数学教師・高野敬二と結婚している。ぎんの方は東京で大部屋女優をしているのだが、一機から「助けてほしい」という電報を受け取り、急ぎ故郷に帰ってきた。
高田連帯所属の陸軍少尉・中原紘一は自分の上官である小桜大尉の夫人・夢野が大尉の留守中に一機と姦通しているという情報を手に入れる。紘一の叔父であり、かつて一機の親友だった酔ヶ浜警察署巡査部長・中原源三、紘一の同僚であり小桜大尉の弟でもある小桜徹平少尉、小桜家の長姉・はると共に一機を追求にやって来る。ぎんと一機は姦通罪を逃れるため、大芝居を始めるが…。上演データ
上演データ
1986(昭61)年12月3日~18日
木冬社結成10周年=紀伊国屋書店創業60周年記念提携公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
振付:村田大
舞台監督:堀井俊和
出演:平幹二朗/松本典子/垂水悟郎/黒木里美/伊野史洋/やまび研/石塚智二/磯野佐和子/伊藤珠美/王城美璐/菊岡薫/鈴木京子/林京子/南谷朝子 -
1986
薔薇十字團・渋谷組
『新劇』1986年6月号
骨董屋を営んでいる通は最近妻を亡くしたばかりだが、本人は妻は家出していると思っている。その様子がおかしいことに気付いた小学校の同級生たちは、通が気落ちしているのものと思い、お金を募って「バラ戦士の会」という派遣制の売春をする団体に通のところへ行って慰めてくれるよう前金で頼んだ。
一方通の方はそんなこととは知らず、アンティークな電気スタンドを並べた部屋に今日も新しいスタンドを買って来た。そこへ「バラ戦士の会」から派遣された女がやって来るが…上演データ
上演データ
1986(昭61)年4月24日~30日
パルコ制作公演
会場:パルコ=スペースパート3
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
舞台監督:高田憲治
製作:増田通二
制作:山田潤一/内藤美奈子
出演:吉行和子/蟹江敬三 -
1986
血の婚礼
コインランドリーとビデオショップにはさまれた路地。降りしきる雨の中を鼓笛隊が通り過ぎてゆく。近所に住んでいる北の女は、二年前結婚式から逃げ出して、北の兄と一緒に上京したのだが、今二人は別居している。そこへ花嫁に逃げられたハルキと北の弟、親戚連中がやってくる。路地に住む人々を巻き込みながら、三人は再会するが…。上演データ
上演データ
1986(昭61)年7月15日~27日
GEKISYA NINAGAWA STUDIO 第4回公演
会場:ベニサン・ピット
音楽:「アメイジング・グレイス」
演出:蜷川幸雄
照明:原田保
音響:高橋巌/井上正弘
装置:沼田憲平
衣裳:木村晶子
舞台監督:明石伸一
出演:大川浩樹(兄さん)/平井太佳子(姉さん)/渕野直幸(北の兄)/鈴木真理(北の姉)/馬場千登勢(北の姉)/渋谷茂(北の弟)/川部いちろう(北の弟)/松重豊(シーちゃん)/大坂義裕(ハルキ)/中村恵子(ふねの姉)/森田眞由美(ふねの姉)/菊地一浩(精三)/飯田邦博(北浜のおじさん)/砂原茂(親戚のおじ)/妹尾正文(喪服の男)/石丸さち子(高校生)/伊東千啓/大石継太/高木透/坪井美香/西初恵/宮城由佳/難波真奈美/左明建/阿南健治/楠田由美/神戸美鈴(以上喪服の男女)/磯崎礼子(長女)/今井啓子(次女)/安田英一(長女の夫)/勝村政信(弟)/石橋慶一(コインランドリーの客)/長谷川晴美(同)/飯田恵子/内野冨美子/下村久実(路地の人びと)/樫尾佳代子/羽子田杏子/久川明美/雨宮三郎/伊藤文雄/岡田正/風間正弘/高橋健二/月田真美子/中村兆成/吉井秀子(鼓笛隊)/清家栄一(トランシーバーの青年) -
1987
なぜか青春時代
『新劇』1987年8月号(No.413)p131~193
東京、とある駅の操作場近くにあるビアホール「車庫」の女主人・浅井ふねは、夫が出奔し、以来一人でこの店を守り続けてきたが、今日を限り店を閉じる決心をしていた。しかし一人の女の客の話を聞くうち、1日だけ閉店を伸ばすことにする。その客・小林海は15年前にここで別れた仲間たちと明日再会するために、札幌から上京してきたのだった。
最後の夜、次々と客が集まってくる。そして警官に追われた学生の一団をかくまった、あの日が蘇る。上演データ
上演データ
1987(昭62)年7月4日~31日
パルコ制作公演
会場:パルコ劇場
演出:蜷川幸雄
美術:朝倉攝
照明:原田保
音響:高橋巌
衣裳:宮本宣子
舞台監督:明石伸一
製作:増田通二
制作:山田潤一/立石和弘
出演:夏木マリ(小林海)/松本典子(浅井ふね)/津嘉山正種(岸本善)/蜷川美穂(浅井竜子)/深水三章(河本秀次)/緋多景子(浅井ゆめ)/大門伍朗(啄本)/不破万作(伴作)/新井康弘/堀弘道/清家栄一/妹尾正文/渕野直幸/平井太佳子/松重豊/黒木里美/王城美璐/石塚智二/他 -
1987
戯曲推理小説―ローズマリーの赤ん坊のように
市民劇場主催の「欲望という名の電車」地方公演の楽屋。劇団の看板女優・清原ぎんは主役のブランチを演じていたが、舞台の上で妹えりの亡霊を見たことで動揺、大失敗をしてしまう。えりはその劇場の楽屋で1年前に自らの命を絶っていた。
亡霊は楽屋に戻ったぎんの前に再び現れ、自分は自殺ではなく誰かに殺され、その犯人を見つけるために出てきたのだと語る。そして、えりの息子の木村小太郎、そして劇団のかつての仲間で、えりの別れた夫木村冠も登場するが、息子や夫にはえりが見えないらしい。楽屋は混乱を極め…上演データ
上演データ
1987(昭62)年11月6日 (金) ~1987年11月15日 (日)
木冬社=パルコ提携公演
会場:パルコ=スペースパート3
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
出演:松本典子/黒木里美/不破万作/王城美璐/他 -
1989
たそがれて、カサブランカ
函館のスナック「カサブランカ」に、かつて有名だったが今ではその存在すら覚えている者のないボードビリアン、年老いた「黄色いコブラ」という渾名の男が住み着いていた。ある日、彼に憧れ、今も尚崇拝し続ける一人の若きボードビリアンがやって来る。上演データ
上演データ
1989(平1)年4月14日~30日
会場:パルコ=フジテレビ提携公演
演出:杉田成道
美術:妹尾河童
照明:谷川富也
音響:高橋巌
衣裳:ピーコ
舞台監督:萬宝浩男
演出助手:石原理江子
制作:山田潤一/横山良多/千葉晋也/小巻健司
出演:田中邦衛/原田美枝子/小堺一機/永島敏行/桜井センリ/他 -
1989
恋愛小説のように
テレビドラマのシナリオ書きをしている清原道子は北陸の故郷の町に帰って来た。生家のすぐ近くには廃駅がある。ここにはかつて北陸西線が走っていたが、今では廃線になっている。廃駅は現在では近所のお年寄りたちの憩いの場となっているようだ。
道子は一応叔父の七回忌ということで呼ばれたのだが、生家は隣家と一緒に土地を売却するらしい。その相談というか了承を得るため甥に呼ばれたのである。生家には姉のはなと息子の徹、その嫁の勝子が住んでおり、娘の洋子と妙子も呼ばれていた。
隣家の五十嵐家の方は長男の森一がやはり東京から呼ばれて来ていた。森一は理科系の大学教授をしていたのだが、すでに5年前に退官している。十歳以上離れていた道子とは一緒に遊ぶようなことはなかったが、いろいろな思い出は共有していた。
今の代の両家で話は進められていたのだが、境界線の問題が持ち上がったことで、以前から少しぼけ気味だったはなが、突然思い切った行動に出て周囲を混乱に陥らせてしまう…。上演データ
上演データ
1989(平1)年12月
木冬社第15回公演、木冬社=紀伊國屋書店提携公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
舞台監督:堀井俊和
制作:田上起一郎/岩下佳保里
出演:芦田伸介(五十嵐森一)/松本典子(清原道子)/黒木里美(清原洋子)/中村美代子(清原はな)/木津修(五十嵐周一)/菊岡薫(五十嵐清子)/石塚智二(清原徹)/田中幹子(清原勝子)/林香子(清原妙子)/川田涼一(神崎次郎)/南谷朝子(しのぶ)/王城美璐(みずえ)/松戸賢一(サトル)/越前屋加代(えり)/加藤早苗(老女)/竹内沢子(老女)/三村朋子(老女)/赤石知也(思い出の人々)/原口健太郎(思い出の人々)