-
1990
弟よ
芸術選奨(第41回・1990年度)演劇部門・文部大臣賞/テアトロ演劇賞(第18回・1990年度)
坂本龍馬が京都で暗殺されて三年後、故郷・土佐では龍馬の死が五十日も遅れて知らされたこともあって、龍馬がまだ生きていると信じ、その幻影にとらわれている人々がいる。龍馬の幼なじみ下坂本源之助と龍馬の長姉・高松千鶴である。
千鶴は京都で生活に困っているらしいと伝聞される妻のおりょうを土佐で引き取り、龍馬の消息を知ろうとする。龍馬のすぐ上の姉・坂本乙女はそんな長姉を案じ、自ら京都へ向かう。千鶴に龍馬が死んだことをはっきりと知らせるためである。
乙女が京都へおりょうを迎えに行くと、そこには龍馬に誘われて脱藩した、乙女の前夫の弟・岡上清三郎とおりょうの兄・藤五郎がいた。おりょうの他に、何故かこの二人も土佐へ連れて帰ったが…。上演データ
上演データ
1990(平2)年12月8日~18日
木冬社第16回公演,木冬社=紀伊國屋書店提携公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:清水邦夫(芸術選奨文部大臣賞)
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
殺陣:竹田寿郎
舞台監督:堀井俊和
制作:田上起一郎
出演:松本典子/中島久之/磯部勉/堀越大史/黒木里美/内山森彦/中村美代子/鈴木実/石塚智二/松戸賢一/川田涼一/原口健太郎/南谷朝子/王城美璐/菊岡薫/林香子/越前屋加代/田中幹子/加藤早苗/三村朋子 -
1991
哄笑―智恵子、ゼームス坂病院にて
『テアトロ』1991年11月号(585号)
昭和11年5月上旬、南品川のゼームス坂教会の集会室が舞台。二・二六事件の2ヶ月後、世相は次第に暗くなっていった頃である。この教会の隣にはゼームス坂病院があって、精神病患者が多く入院している。詩人で彫刻家の高村光太郎の妻・智恵子もここに入院していた。
病院と教会の間には塀があったが、病院から大通りへ抜けるのに近道なため、患者や看護婦、医師も塀を乗り越え、集会室を通り過ぎて行くことがしばしばあった。教会の牧師・田原には四人の娘がいた。長女の塩子は舞台で踊っていたが、足を痛めて家に帰ってきていた。そこへ智恵子が近道をしようと教会へやって来て、二人は親しくなった。
智恵子は夫の光太郎がすでに死んでしまっていると思い込み、生身の光太郎を受け入れない。光太郎は自分を思い出させようと必死の努力をするが…。上演データ
上演データ
1991(平3)年10月5日~13日
木冬社第17回公演、木冬社=パルコ提携公演
会場:パルコ=スペースパート3
演出:清水邦夫
美術:清水邦夫
美術監修:朝倉攝
照明:堀井俊和
音響:深川定次
舞台監督:市川兵衛
制作:岩下佳保里/村田久代/宗由紀美
出演:松本典子(高村智恵子)/小林勝也(高村光太郎)/内山森彦(田原牧師)/黒木里美(田原塩子)/南谷朝子(田原実子)/王城美璐(田原千秋)/加藤早苗(田原奈美)/越前屋加代(村上春江)/田中幹子(村上春江)/石塚智二(新井中尉)/松戸賢一(中上少尉)/根岸朗(桐野憲兵大尉)/川田涼一(宗田憲兵上等兵)/原口健太郎(山崎憲兵上等兵)/竹内沢子(西野たえ)/菊岡薫(横浜さと)/林香子(浜田りえ)/三村朋子(患者)/宗由紀美(患者)/松井綾(患者)/村田久代(患者)/望月咲子(患者)/相川敏幸(信者1)/関根由美子(信者2) -
1992
冬の馬
『テアトロ』1993年1月号 p146~194
東京近郊のとある町にある吉村時計修理店。今は時計の修理はせず、大正時代の手作りの銀時計を作っている。ここの女主人・波子はかつて夫も子供もいながら、同じように妻子ある大学教授とかけおちして、この時計屋を始めたのだ。その夫も亡くなり、今は、前夫とともに捨てた実の息子・通の別れた妻・美枝と二人で暮らしている。
ある日、死んだ夫の息子、つまり義理の息子・研一が訪ねてくる。波子と研一は同じ歳で、ずっと以前病気になった時に四ヶ月ほど一緒に暮らしただけの間柄である。夫が死んだとき、この家の処分は5年後に決めようと言ったきり、7年間連絡がなかったのだが、突然やって来たのだ。妻や娘と一緒にマンションで暮らしている筈なのだが、「自分の住む場所が欲しい」という研一には何か事情がありそうだ…。上演データ
上演データ
1992(平4)年12月10日~25日
木冬社第18回公演、木冬社=シアターX(カイ)提携公演
会場:シアターX(カイ)
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
舞台監督:堀井俊和
制作:倉掛淳一
出演:米倉斉加年(吉村研一)/松本典子(吉村波子)/磯部勉(村上通)/黒木里美(中島美枝)/中村美代子/南谷朝子/王城美璐/菊岡薫/林香子/越前屋加代/田中幹子/石塚智二/松戸賢一/他 -
1994
わが夢にみた青春の友
紀伊國屋演劇賞(第29回・1994年度)団体賞
『テアトロ』1995年2月号 p146~187
昭和14年、冬。信濃川の近く。満蒙開拓団に参加して逃亡してきた健が「まだら呆け」になって、川島硝子工場にひそんでいる。健の弟の三吉はいま、健の妻と暮らしている。
そこへ小学校の先生である「はる」が現れ、健の偽りの狂気を見抜く。はるの息子・哲夫と健の娘・えりはどうやらつきあっているらしい。この哲夫と弟の三吉に召集令状がやって来て…。上演データ
上演データ
1994(平6)年12月
木冬社=紀伊國屋提携公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:清水邦夫
受賞:紀伊國屋演劇賞(第29回・1994年度)団体賞
美術:上田淳子
照明:山口暁
音響効果:深沢定次
衣裳:若生昌
振付:竹内登志子
射撃指導:織田和家
宣伝美術:中本訓生
舞台写真:中野英伴
舞台監督:堀井俊和
演出助手:杉本和哉,藤田剛生
制作:三村朋子,宗由紀美,山本康子
出演:蟹江敬三(川島健)/磯部勉(川島三吉)/黒木里美(川島葉子)/越前屋加代(川島えり)/中村美代子(浅川文)/中島久之(浅川小太郎)/松本典子(東はる)/吉田敬一(東哲夫)/林香子(加藤よし江)/松戸賢一(清村源一)/根岸朗(佐々良作)/藤田剛生,杉本和哉(桑田右太)/泉谷侑子(えりの担任の先生)/天笠真弓,新井理恵(えりの同級生)/関根由美子,村田久代,扇谷光恵(地元の女性)/津嘉山正種(新田のドクターの声) -
1995
愛の森―清盛をめぐる女人たち
『テアトロ』1995年8月号 p124~170
舞台は源平争乱期。平安時代末期の平家滅亡後、清盛の愛人だった祇王とその母ふね、妹・祇女は郎党・源三を伴い母の故郷に落ちのび、母の幼なじみである湊正綱の元にかくまわれている。
祇王は狂気におかされているが、自分を追い出した、清盛の愛人・仏御前が現れるときだけ生き生きとする。ところが、その仏御前は3年前に死んでおり、ふねが仕組んだ芝居で、実際は「ふぶき」という女に頼んで演じてもらっているだけである。
一方、正綱の息子の八郎は郎党の源三が清盛の一番下の弟・平忠渡ではないかと疑い、ふぶきを使って、狂気の祇王から隠された事実を聞き出そうとしている。忠渡を捕らえて召し出せば、出世できるのではないかという野心をもっている。
平家狩りの手は間近に迫ってきた。正綱は追っ手に渡すくらいなら、3人を自らの手で始末する覚悟でいるが…。上演データ
上演データ
初出:1995
文学座公演
文学座、紀伊国屋書店提携
演出:鵜山仁
装置:倉本政典
照明:増山聖
音響効果:望月勲
衣裳:中村洋一
舞台監督:杉本正治
演出補:松本祐子
制作:日下忠男
殺陣:國井正広(旧漢字の広)
所作指導:世家真ますみ
出演:仏御前[実はふぶき](平淑恵)/祇王(寺田路恵)/祇女(山本郁子)/ふね(母刀自)松下砂稚子/源三[実は平忠度](坂口芳貞)/正綱(金内喜久夫)/三郎(清水明彦)/八郎(内野聖陽)/浜の女1(塚本景子)/浜の女2(山本あゆみ)/浜の女3(斉藤恵理)/浜の女4(山本深紅)/郎党1(横山祥二)/郎党2(佐藤淳)/郎党3(入江修平)/郎党4(白鳥哲)/郎党5(浅野雅博)/郎党6(徳永淳) -
1996
わたしの夢は舞う―會津八一博士の恋
『テアトロ』1996年5月号 p110~162
昭和7年、東京・下落合の秋艸堂。大学で美術史を教え、歌人でもあった會津八一の住まいだが、大勢の学生たちが何やらどたばたと片づけをしている。遠縁の娘きい子がやって来るというので、大掃除をしているのである。
きい子は20歳、八一は五十一歳。きい子はここで大勢の弟子たちとともに八一の世話をすることになった。それから、日本が満州に乗り出し、太平洋戦争へと突入、戦局が悪化していった昭和20年までの13年間の八一と弟子たち、そしてきい子への愛情を描いている。上演データ
上演データ
兵庫県立ピッコロ劇団
1996(平成8)年1月
会場:兵庫県尼崎市ピッコロシアター
再演:1997(平成9)10月17日~19日
会場:三百人劇場
演出:秋浜悟史
出演:鈴木智/平井久美子 -
1996
イエスタデイ
新潟に住む姉弟のもとに、東京から疎開してきた4人きょうだいとのふしぎな交流の時間。
このドラマは作者・清水の少年時代の体験から得たもので、新潟県の田舎が舞台になっています。東京から疎開してきた親戚の子供たちと一緒に生活した日々、そして彼等がある事情から長崎へむかい、全員被爆したことの事実‥‥‥それからヒントをえて、書かれた作品です。
上演データ
上演データ
2003年8月20日~24日
シアターΧ+木冬社公演
会場:シアターΧ
演出:清水邦夫/松本典子
美術:上田淳子
照明:山口暁
音響:斉藤美佐男
出演:吉田敬一/泉谷侑子/新井理恵/水谷豊/金光泰明/佐藤里奈/関谷道子/中村美代子/吉田悦子/松本典子/清水邦夫 -
1998
リターン2部作
「海へ…ヘミングウェイ幻想」
「陸へ…サムトの女たち」「海へ…―ヘミングウェイ幻想―」『せりふの時代』1997年秋号(No.5) p284~307
「老人と海」などで知られるヘミングウェイは、60歳を過ぎた頃、極度の鬱病になり、猟銃による自殺未遂を引き起こす。事件後、医師団は病院での治療を勧めるが、彼は拒否して自分で作製したメンタル・リハビリテーションを始める。
その材料として使われたのが、ボートである。暗い海に漕ぎ出すボートを病院の一室に持ち込み、リハビリを行う。それは過去に彼がかかわった女性たちを自ら演じるというものだった…。上演データ
上演データ
木冬社・シアターX提携公演
1998(平成9)年7月2日~15日
会場:シアターX
演出:清水邦夫
美術:上田淳子
照明:山口暁
音響:深川定次
衣裳:若生昌
舞台監督:富川孝
制作:越前屋加代/新井理恵
「海へ…ヘミングウェイ幻想」
出演:米倉斉加年(ヘミングウェイ)/林香子(看護婦)/深野良純(看護人)
「陸へ・・・・サムトの女たち」
出演者:松本典子(坂本ぎん)・中村美代子(老女)・黒木里美(坂本新子)・泉谷侑子(妙子)・越前屋加代・新井理恵(かな子)・吉田敬一(若い男)米倉斉加年(老人) ほか
-
1998
草の駅
「オフィーリア幻想」(その後「草の駅-オフィーリア幻想-」と改題)ある山奥の精神病院にある日一人の女性が入院している筈の弟を訪ねて来る。医師や看護婦らしき人々があらわれるが、その病院はやがて廃止される運命にある‥上演データ
上演データ
木冬社「サイスタジオにおける小さな公演VOL.3」公演
1999(平成11)年4月
会場:サイスタジオ
演出:松本典子/清水邦夫 -
2000
恋する人びと‥‥軍部とダンディズム
昭和十一年、二二六事件でめざましい活躍を見せた第十九連隊が駐屯する北陸の軍都が舞台。清村ら3人の将校は、老朽化のため閉鎖されている将校クラブが建て直されるまでの間、利用できる西洋館を探していた。
3人は古びた、カビ臭い銀嶺写真館を見つけ、何故か気に入ってしまう。そこは現在は写真館としては使用されておらず、ダンス教室、詩の朗読会などに利用されている。現在、写真館を管理している北野ぎんは彼らの申し出を何故かきっぱりと断るのだった…。上演データ
上演データ
2000年6月1日~11日
木冬社第回公演
会場:紀伊国屋サザンシアター
演出:清水邦夫
美術:上田淳子
照明:山口暁
音響:深川定次
出演:松本典子/中村美代子/磯部勉/黒木里美/吉田敬一/中島久之/林 香子/越前屋加代/泉谷侑子/扇谷光恵/新井理恵/桜井友紀/関谷道子/小林美穂/瀬下智子/川本貴史/深野良純/水谷豊 -
2000
破れた魂に侵入―Life Line―
『悲劇喜劇』2002年2月号
舞台は「いのちの電話」のオフィス。自殺志願者からの相談を電話で受けるというボランティア団体である。相談員は全員他の職業をもつボランティアであるが、きちんと研修を受けて配属されるのだ。
新人の村田海が初めての相談の電話に出る。相手は中年の男のようだ。交通事故で妻子を亡くしてから、気づくと拳銃をもてあそんでいると言う。何故拳銃をもっているかというと、相談者が警察官だからだ。アメリカの大都市では自殺者の比率で警察官が第二位を占めるという話を二人とも知っている。男はオフィスに貼ってある標語を読んで電話を切る。相談員らは男の声には聞き覚えがあるのだが‥。上演データ
上演データ
製作:木冬社
2001年11月16日~25日
会場:サイスタジオ
演出:清水邦夫・松本典子
美術:上田淳子
照明:堀井俊和
出演:吉田敬一/泉谷侑子/新井理恵/川本貴史/水谷豊/瀬下智子/佐藤里奈/大野舞紀子/金光泰明/渡辺亮/根本おりえ -
2001
女優N―「戯曲推理小説」より
1987
日本海ぞいにある町、その町の市民会館へ公演にやってきた清原ぎんと劇団員たち、演目は『欲望という名の電車』。途中まで芝居は順調に続いたが、突然ぎん演じるブランチとスタンレーがが舞台上で正面衝突転倒し舞台は上演中止。
突然の出来事に劇団員たちはあたふたするが、主役のぎんは公演の続行について口を閉ざしている。というのもこのホールは、同じ劇団にいたぎんの妹のえりが楽屋で毒入りのワインを飲んで自殺した因縁の場所だったのだ。
幽霊になったえりが突然舞台に現れ、それが転倒の原因だった。奇妙な再会を果たした姉妹。そして妹のえりが思いも寄らないことを口にした。「姉さん、あたし自殺したんじゃないの、殺されたの」‥‥‥‥上演データ
上演データ
2001年6月7日~17日
会場:シアターΧ
演出:清水邦夫
美術:上田淳子
照明:山口暁
音響:深川定次
衣裳:若生昌
舞台監督:富川孝
出演:松本典子(新村玲)/黒木里美(新村えり)/吉田敬一(木村冠)/水谷豊(木村小太郎)/深野良純(小早川ばく)/佐藤里奈(信子)/根本おりえ(ミキ)/金光泰明(亀井)/川本貴史(だいすけ)/渡辺亮(ブーやん)/林香子,新井理恵(清野・ダブルキャスト)/泉谷侑子(真美)/瀬下智子(ジュリア)/大野舞紀子(ルイーザ)/中村美代子(中野ハナ)